こんにちは。ことのは1号館、言語聴覚士の原田です
前回の内容はこれから言葉を取り込もうとしている時期の、言わば土台作りのお話でした。本日はある程度、言葉を取り込む力が付いた就学後の児童について考えていけたらと思います。ただ、個人的な感想も含まれていると思いますのでご配慮下さい
私が所属する様な療育事業所には未就学児が通える【
児童発達支援】と就学児が通える【
放課後等デイサービス】という区分わけがあります。ことのは1号館はどちらにも該当するのですが、上記で述べた様に就学児にもなると言葉の土台ができている児童も多くなります。
その場合、就学後の生活はこれまで獲得した言語能力を使い、如何に
社会生活で他者と
円滑にコミュニケーションを取っていけるか
、という【
ソーシャルスキル】が問われる場でもあります。
例えば集団遊びの中で順番が待てたり、ルールに従える事など(
集団スキル)。物を壊したり、他人を傷つけてしまった時に
謝る事など(
謝罪スキル)などがあります。他にも
お願い・要求スキルや
非難スキル、
SNSスキルなどがありますが、それぞれのスキルのトレーニング方法については今後、具体的に触れていこうと思います
それではソーシャルスキルのトレーニングの事を【
SST】と言うのですが、SSTを行う際の大事な知識の一つとして【
抽象概念の発達】というものがあります。抽象概念とは
目に見えないものであり、絵に描く事や写真・動画で撮ることが出来ず、
言葉で説明しないといけない概念の事です。例えば、動物や野菜といったカテゴリーにあたる概念がその一つです。犬やトマトのように概念が具体的になればなる程、
目に見え特定されますよね(
具象概念)。
抽象概念は
平均9歳ぐらいで獲得し始めると考えられていますが、しかし発達障害の子供達は言葉の発達が遅れている為、
抽象概念の獲得が遅れる事が多いのです。そして、その事によって
友達との関係でトラブルが見られたり、
先生の指示が理解できなっかたりするのです。
では、そういった場面に私達が出くわした際に思わず、やりがちな言葉掛けが「
〜してはいけません」という指示だったりしないでしょうか?…少なくとも私は未だに言ってしまう事が…嗚呼、心が痛い〜
しかし、
否定的な指示も絵や写真で表す事が難しい
抽象概念なのです。ですので、「
〜しない」
ことを絵で表そうとする事も難しく、その為廊下を走ら
ない事や友達と喧嘩
しない事といった否定的な指示を絵で表す場合、それらを
している行為にをつける絵などが使用されがちです。むしろ、それは「
してはいけない事」
をイメージ化させてしまい
逆効果なのです
大人でも「マスクを買い占めてはいけません」と言われれば言われるほど、買い占める行動が見られたそうです 余談ですが、心理学的観点ではそういった人間の行動を【
カリギュラ効果】とも言うそうです
ですので、望ましい行動へ修正する場合は「
していい事」
を目に見えるモデルとして示していく事が子供にも大人にも重要になるのですね
っと、ここまでが教科書的な内容なのですが… 実際は、そう一筋縄には行かないのが現実かなというのが私の印象です
何故なら、発達障害の子供達は
家庭的環境も複雑であったり、社会に対する
孤独感や
不安感から
自己肯定感が下がりやすく、または自分自身を
理解してもらえない苛立ちだってあります そういった
心的要因もある中で
一方的に「
していい事」
だけを伝えても素直に受け止めて貰えない時も多いです。 ですので、私はSSTの様なある種のテクニックも大事ですが、それよりももっと大切なのは
子供達との信頼関係だと思っています。
子供達にとって(大人もそうですが…)信頼できない人の意見って、結局受け入れて貰えなかったり 、また逆に信頼出来る人の意見であれば、理解しようと努力してくれたりしますよね 。そういった
信頼できる人達と一緒に行えた成功体験の積み重ねから、いずれどんな場面でも一人で踏み出せる勇気になっていくのではないのかなと思っています
ですので、その信頼関係を築く為にこれからも、
まず『私達から』子供達を理解しようとする姿勢を忘れず(=子供達の
内なる気持ちに気付く事)、そして
一方的に「教える」のではなく、自発的に「気付く」様な導き方を心がけたいと思います
※来週はモンテッソーリ教育から、幼児期の【イヤイヤ期】について書いていこうと思います。